旅行と関係ないけど、読んだ本を紹介します。
夜空に泳ぐチョコレートグラミー (ネタバレあり) 町田 そのこ
著者は2016年、「カメルーンの青い魚」で新潮社が主催する第15回女による女のためのR-18文学賞の大賞を受賞した。これからの作家。
ちょっと解りにくかったのであらすじを書きます。ネタバレありなので、読んでいて意味が解かんなくなったときに見て。「最後の海になる」だけは、前の話とのつながりがわからない部分が多かった。
魚の名前をタイトルにしている。与えられた環境で一生懸命生きる人を描いているのが良かった。
カメルーンの青い魚
サキコ幸喜子:高校で恋人のりゅうちゃんのけんかに巻き込まれて前歯を折る。
りゅうちゃん左官になってそれからヤクザらしきものになる。
サキコは高校卒業後縫製工場で働くりゅうちゃんとの子供啓太をひとりで育てる。工場でフィリピン人コーラにかわいがられる。
夜空に泳ぐチョコレートグラミー
近松晴子(ちかまつはるこ)祖母は烈子で最近は物忘れ。
田岡が近松をいじめているが近松反撃して殴り田岡がおもらしする。
啓太はサキコの息子で新聞配達をする。サキコはりゅうちゃんを探しに大阪に行きたい。
波間に浮かぶイエロー
沙世さよ28才 恋人が自殺した。軽食ブルーリボンに勤務している。
ブルーリボンはハナヒゲウツボという魚の英語の名前。この魚はオスで生まれるが成長してめすになる。店主は芙美(ふみ)。元、重史(しげふみ)で男、今おんこ=女になる途中。
環たまき、芙美ともと同じ会社に勤務。芙美を頼って来た。 38才
芙美は幸喜子の子育てを助けていた。
実は重史しげふみさんは死んでいて、高梁(たかはし)文雄が芙美になっていたことが解る。サキコの子供を世話してくれたのは文雄だったことにより沙世がこれに気づく。
高梁文雄と重史はパートナーでブルーリボンを始めた。
溺れるスイミー
唯子(ゆいこ)はトラック運転手の宇崎くんと会う。
宇崎は高校の時にりゅうちゃんと喧嘩して負ける。宇崎はその喧嘩を止めようとして歯を折ったサキコのことを好きだった。
海になる
桜子 流産してから夫に暴行を受ける。
長髪の男 清音きよね に会う。
水に立つ人 (あらすじにネタバレあり) 香月夕花(かつきゆか)
短編集です。著者は大阪府出身。京都大学工学部を卒業する。2013年、短編「水に立つ人」で文藝春秋が主催する第93回オール讀物新人賞を受賞する(出典:Wikipedia)。京大工学部で小説家ってどんなひとなんでしょうね。ネットにあまりでていませんでした。
やわらかな足で人魚は
主人公陽(はる)は親が再婚して一緒に住めなくなり施設に居る。
沙羅(さら)ルームメイトで風俗系(デート喫茶?)でバイトしている。風俗で働く男についていく。
阿川瑞貴(みずき:男)は同じ施設に住む先輩で陽が付き合っていた。沙羅は風俗の男に騙されて逃げ込んだ先が暴力団に入っていた阿川のところ。
ちょっとやすせないお話。
岸辺で私は歌を待つ
千砂(ちさ)は迷い猫を探す探偵。以前は干潟の干拓事業関係の会社勤務。
鍵沢秀子から依頼を受ける。
彼女の海に沈む。
淳一は中学教師、家庭に問題がある谷澤晏奈(あんな)を気にしているうちに引かれていく。この短編がいちばん印象深かったな。落ちていく男の感覚がリアルでした。
水風船の壊れる朝に
大曽根澪みお:花屋のオーナー、2つの店を持っていて一つを閉めて家を売る。
大山直すなお
宮澤天海(あまみ):古い家を買って花屋を引き継ぐ
水に立つ人
始業式で写真を撮るのは山階写真館(やましな)に勤めている葛城樹(かつらぎたつる)。は先生である私が子供嫌いであることを指摘する。葛城青年の撮った写真の場所を訪れる私だが、そので発見したのは…
じんかん 今村 翔吾(イマムラ ショウゴ)
以下、一部ネタバレあります。
戦国時代〜安土桃山時代の武将松永 久秀(まつなが ひさひで)の一生を書いた本。
作者今村氏は1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビューし、同作で第七回歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞を受賞。「羽州ぼろ鳶組」は大ヒットシリーズとなり、第4回吉川英治文庫賞候補に。18年「童神」(刊行時『童の神』に改題)で第十回角川春樹小説賞を受賞、同作は第160回直木賞候補となった。『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。他の文庫書き下ろしシリーズに「くらまし屋稼業」がある。(出典:Wikipedia)
とても良くかけている歴史小説。500ページとちょっと長いですが、一気に読めます。主人公松永久秀は、歴史上では、出生から三好家での役割などなぞの多い人物らしい。その謎に一つの答えを出している。松永弾正、九兵衛(くへい)などいろいろな名前で呼ばれますが同じ人です。それと最初にでてくる信長の小姓(こしょう)又九郎(またくろう)と九兵衛は名前が似てますが全く別の人です。
松永久秀は、三好家を乗っ取ろうとして3つの大罪(だいざい)
1.主君殺し
2.将軍殺し
3.東大寺大仏殿焼き討ち
を犯した人と思われている。そのそれぞれに、信念をつらぬいたことの結果であるとの解釈で話がすすんでいく。
じんかんとは、人間のことだが、じんかんと読むと人と人が織りなす間つまりこの世ということ。P114
松永久秀の世の中に神や仏はいない、それは、人間が都合よく作り出したものという考えには、とても共感できた。
「罪の轍」 奥田英朗
1968年に起きた吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐殺人事件を題材にした小説。この事件は日本で初めて報道協定が結ばれた事件。奥田英朗インタビュー記事がありました。
北海道から東京へ犯罪の場所が移りながら警察の奮闘と犯罪の悲しさが本を面白くしている。600ページだけど一気に読める。前回の東京オリンピック前でその時代の状況も解る。犯罪を起こす人にはそれなりの理由があるんだと思わせる。
インタビュー記事で『物語で人を裁くことは決してしないのが奥田さんのモットーだ。「誰でも事情があるし、こいつなら何を言うかと想像しながら書く。勧善懲悪みたいな物語は僕には書けない」』と著者の奥田氏は言っているがなるほど、その通りの小説だと思う。
登場人物:
宇野寛治(うのかんじ):北海道礼文島出身
落合昌夫(まさお)若い刑事、その妻、晴美
山田金次郎:時計商、自宅で殺される。信和会と拳銃輸入を行っていた。
山田の三女の娘婿実雄(じつお)が後を継ぐ。
信田和三郎(しのだわさぶろう)ヤクザ信和会(しんわかい)の会長
その長男の信田義春(よしはる)
花村正一(はなむらまさかず)は信和会の一つの派
希望の糸 東野 圭吾
親子の関係、恋人の関係を書いている。東野圭吾らしく、あきさせないで読ませる。うまいなーと思いながら読みました。
カフェの経営者弥生が殺される。弥生の前の夫、その同棲相手などが出てきて人間関係がからみあう。読みやすく、よい本だと思います。
登場人物:
汐見行伸しおみゆきのぶ
長男 尚人なおと小学4年生 長女 絵麻えま 6年生
妻 汐見怜子れいこ 母は竹村恒子(つねこ)
汐見行伸 62歳になったとき、娘 萌奈(もな)
芳原亜矢子 金沢の料亭旅館「たつ芳」女将 40歳以上
芳原 真次まさつぐ 亜矢子の父 亜矢子の母:正美(まさみ)
松宮脩平(まつみやしゅうへい)主人公33歳 刑事 警部補 母は克子
加賀恭一郎(かがきょういちろう)刑事主任:松宮の従兄(じゅうけい:いとこ)
長谷部 刑事課20代の巡査
坂上:刑事
花塚弥生(はなづかやよい)カフェの経営者
綿貫哲彦(わたぬきてつひこ)弥生の前の夫 その同棲相手:中屋多由子
有川ひろさん『イマジン?』
「図書館戦争」などの書著で有名な有川ひろの作品です。
「図書館戦争」は、アニメにもなったし、映画では榮倉奈々が出ていて、どちらもなかなかよいできだと思います。私は好きでした。それで、この作品はこれまた、てれべドラマになった「空飛ぶ広報室」という作品があるのですが、そのスピンオフというか、そのドラマ制作が舞台になっている作品です。ちなみに「空飛ぶ広報室」もガッキーが出ていてなかなかの出来のドラマだったと思います。ちなみに有川さん女性です。「有川浩」から「有川ひろ」に名前を変えています。浩だと男性に間違われるからとの説もあります。
主人公の良井良介(いいりょうすけ)は27歳のフリーター。歌舞伎町でキャバクラのチラシを配っていて、バイト先の先輩・佐々賢治に誘われ、ドラマ撮影現場の制作バイトを始める。なれない仕事も全力で飛び込み成長していく。何も考えずに楽しく読める本。
「自分が何をしたら相手が助かるだろうって必死で知恵絞って想像すんのが俺たちの仕事だ」などの熱い言葉も出てくるけど、深く考えずにモデルになっているガッキーを想像しながら楽しく読めば良い本と思います。
良井良介(いいりょうすけ)主人公
佐々賢治(ささけんじ)良井の先輩
天駆ける広報室(あまかけるこうほうしつ)「空飛ぶ広報室」をモデルにしている。
喜屋武七海(きやんななみ)「空飛ぶ広報室」の新垣結衣がモデル
亘理俊一(わたりしゅんいち)省エネの亘理。波風立てない性格の先輩。
殿浦イマジン:良井の所属する会社、殿浦(とのうら)が社長
雑賀才壱(さいかさいいち)監督:2章で初オリジナル作品に挑戦する監督。
島津幸(しまずさち)セカンド助監督フィールズ制作会社:殿浦イマジンのライバル会社所属
持続可能な魂の利用 松田 青子
この本は、日本の社会の女性が自分の意見を言えないとか、おとなしいとかそれが、おじさんにコントロールされている世界だとか、そういうことをいいんたいのだと思う。
全体的なつながりが今ひとつ分かりにくいのと、感覚的にはちょっと私には合いませんでした。具体的に言うと、空港で職員の女性からパスポートの写真を見てNice Pictureと言われてThank youと答えたというシーンがあります。日本人の謙遜するとこっろを自分から剥ぎ取っていきたいって主人公は言っているが、それは、習慣の違いみたいなもので、そんなものは、海外では、その習慣に合わせてThank youと言っていればよいし、日本は習慣としてそういう言い方はしないだけの話だと思います。
ノースライト 横山秀夫
登場人物
青瀬稔(あおせみのる)
ゆかり 青瀬の別れた妻日向子(ひなこ)青瀬の娘
岡嶋昭彦(おかじまあきひこ)所長
西川隆夫(にしかわたかお)パース(パースペクティブ)を書く仕事
吉野淘太(よしのとうた)青瀬の作った家を買った人
津村マユミ 同じ事務所に勤務 岡嶋に好意をもつ。
『半落ち』『64(ロクヨン)』などで有名な横山秀夫の2019年の作品。この作家、
2002年、『半落ち』が第128回直木三十五賞候補作となったときに。選考委員の北方謙三が、この小説中で重要な鍵となる要素について関係機関に問い合わせたところ「現実ではありえない」との回答を得て、北方は選考会でこの回答を報告、『半落ち』は現実味に欠けると批判され落選し、直木賞と決別したとのこと。これ、面白いですね。私に言わせれば、小説の9割はありえない話。ただ、確かにあんまり現実的でないこをを刷り込まれても困るし、そのバランスが難しい。「ノースライト」もわたくし的には結末にわかる謎解きがちょっと現実的には起こり得ないんじゃないかと思いました。ただ、小説自体はよく書けているし面白くて一気に読めました。おすすめです。
話は一級建築士の青瀬稔(あおせみのる)がバブルにやられて職がない時に、同級生の岡嶋昭彦(おかじまあきひこ)所長にひろってもらい建築士を続けている。その際に自分が住みたいと思う家を作ってくれとの依頼がくる。建築事務所の日々の競争、プライベートでの夫婦と家族の問題。父親関係の因縁。など、盛りだくさん。1880年生まれの日本にも居たことがあるドイツ人建築家ブルーノ・タウトのことも出てきます。建築好きの人には興味深いかも。
銀花の蔵 遠田潤子(とおだ じゅんこ)
遠田潤子の作品は私は初めて読みます。2009年、専業主婦を続ける傍ら執筆した『月桃夜』で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビューした作家だそうです。とてもよく書けていて、ストレスなく読めました。おすすめです。
主人公、山尾銀花(やまおぎんか)は絵描きを目指していた父が実家の醤油蔵を継ぐため、奈良に移り住む。祖母山尾多鶴子(たづこ)、1歳年上の叔母の山尾桜子、両親の家族。 銀花は苦労しながら必死に生きる。
登場人物:
山尾銀花(やまおぎんか)
山尾美乃里(みのり) 銀花の母 万引グセあり
山尾尚孝(なおたか) 銀花の父
山尾多鶴子(たづこ) 銀花の祖母
山尾桜子(さくらこ)尚孝の妹だが銀花(小学4年生)より1つ年上の叔母さん
大原:杜氏(とうじ):日本酒の醸造工程を行う職人集団、ここでは蔵で働く人をまとめる親方 6年生娘と3年生息子がいる
大原福子:大原の妻
剣呑(けんのん):危険を感じている様子
ハッチー:河合初子(かわいはつこ)銀花の友人
のりちゃん:久慈典子(くじのりこ)銀花の友人
橿原市かしはらし 奈良県、尚孝の実家の醤油蔵
聖子:銀花の子供
サーシャ:聖子の夫
夾竹桃きょうちくとう 花
雲を紡ぐ 読んだ日:20201101 著者:伊吹有喜
読んだ日:20201101作者の伊吹有喜(いぶき・ゆき) さんは昭和44年、三重県生まれ。中央大学法学部卒業。出版社勤務を経て、平成20年に『風待ちのひと』で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞しデビューしたそうです。
本の題材はホームスパンという毛織の布。どんなものかネットで見てみた。イギリス発祥の高級毛織。良さそうだけど、当然高い。マフラーで5000円くらい。僕はマフラーはすぐ無くしちゃうし、だいたい着るものに興味なく、自分の私服の80%はユニクロだから、やっぱり縁がなかった。
都会の高校生山崎美緒が不登校にになり、祖父がホームスパン工房を持つ岩手で自分を見つけていくお話。でも、職人の世界って厳しいのだと思う。都会の高校生がすんなり入っていけるのかはちょっと疑問に思った。でも、美緒の父山崎広志と母香代の関係とか、いかにもありそうですね。一気に読める良い小説でした。
登場人物:
山崎美緒(やまざきみお)
山崎紘治郎(やまざきこうじろう)美緒の祖父、山崎工藝舎(やまざきこうげいしゃ)羊毛から布を織る工房(こうぼう)
山崎香代(かよ)紘治郎の妻、美緒の祖母
山崎真紀(まき)美緒の母、中学の英語の先生
山崎広志(ひろし):美緒の父電機メーカー研究所勤務
川北太一(かわきたたいち)山崎広志のいとこの息子、山崎紘治郎の工房の近く盛岡に住んでいる。
川北裕子:太一の母
猫を棄てる 父親について語るとき 村上 春樹
村上春樹が自分の父との関係を書いた本。ハルキスト(村上春樹の、熱狂的なファン)の私としては村上春樹の書くものは何でも好きです。この本でいうと「でも僕にはそのような父の期待に十分こたえることができなかった。…….学校の授業はおおむね退屈だったし、その教育システムはあまりに画一的、抑圧的だった。」こんな書き方が好きです。村上は学校が相当嫌いだったのだろうし、苦痛だったんだろうけど、それをたんたんと表現しているのがなんともいえずいいです。
ところで、私のおすすめの村上の読む順序は:
1.羊をめぐる冒険 1982年
2.世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 1985年
3.ノルウェイの森 1987年
です。以上を読んで好きになった人は、後は何読んでもいいです。
「風の歌を聴け」や「1973年のピンボール」は、まだ、ジャズ喫茶をやりながら書いていた頃なので、書き方が完成していない感じでそれがまた、いいです。
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